福岡市中央区舞鶴の一般内科、肝臓・消化器の専門クリニック

〒810-0073 福岡市中央区舞鶴3丁目2-1-2F Tel.092-751-2345
肝臓・消化器専門のクリニック紹介
肝臓・消化器専門医 中村東樹
肝機能の異常を指摘された時
各種健康診断、肝炎ウイルス検査実施
a型肝炎、b型肝炎、インフルエンザ、ワクチン接種
当院は電子カルテを導入し、検査結果をグラフ化
肝臓や消化器に関する専門用語の解説
肝炎など肝臓・消化器に関するコラム
地下鉄赤坂駅より徒歩3分
肝臓・消化器専門 なかむら内科クリニック
HOMEコラム > 脾臓の話
コラム(脾臓の話)
上腹部の臓器のなかに、脾臓という小さな臓器があることはよく知られています。ただその臨床的な意味に関してはあまりよく知られていないようです。今回は脾臓について少しだけ紹介したいと思います。


 約30年前、私が医者になりたての頃、北九州市のある総合病院に研修医として勤務したことがありました。その病院に、月 2 回ほど九大を退官された山岡名誉教授が回診に来られていました。先生の回診は非常にユニークで、患者さんの診察時に、脾臓の大きさを打診で測定しておられたのです。診察したすべての患者さんに、脾臓の大きさを、絶対的脾濁音界、相対的脾濁音界に分け、マーカーで表示されておられました。

 現在と違って腹部超音波、 CT 、 MRI 検査などは普及しておらず、内科の診断に聴診、触診、打診というのが大きな役割を果たしていた時代でした。なかでも心臓の大きさ、肝臓の大きさ、胸水、腹水の量、などの判定に打診の役割は重要でした。山岡先生は、内科医に必要な診断学の基本を、医者になりたての私に身をもって教えてくださいました。私はわけもわからず見よう見まねで脾濁音界の勉強したものでした。

 脾臓は、胃の後にあり、肝臓とちょうど反対の左側にあります。正常では、握りこぶしより少し小さ目で、重さは 130 g前後とされています。その働きは、 ( 1 )  血液、血球成分の貯蔵作用、 ( 2 )  老化した赤血球、血小板の破壊、処理、(3)血液中の抗原やタンパクの捕捉、処理、 ( 4 )  免疫反応、などとされています。重要な臓器なのですが、脾臓を摘出してもヒトは生きていくことができます。したがって血小板の数が少なくなるような疾患では、その破壊を減らす目的でしばしば脾摘出手術がおこなわれます。

 私が腹部超音波検査をする際に、必ず最初に確認するのがこの脾臓の大きさです。古賀による計測法をもとに、そのサイズが  25 未満を正常。 25 から 35 未満を軽度脾臓腫大(脾腫)、 35 から 45 未満を中等度脾腫、 45 以上は高度脾腫としています。それ以上の大きさになるとお腹の触診でもわかるようになります。そういうときは指が何本横向きに触れたという表現をします。巨大な脾腫になると、臍のところまで腫大していることがあります。

 超音波検査で脾腫がみられるときは、何らかの疾患が存在すると考えられます。脾腫はある疾患の原因ではなく、結果であることがほとんどです。したがって脾腫を見つけたときは、そこに隠された疾患を見つけ出さなければいけません。それでは脾臓はどういうときに腫大してくるのでしょうか。

 もっとも多くみられるのは、血液疾患です。白血病、とくに慢性骨髄性白血病では巨大な脾腫がみられます。貧血、骨髄線維症、悪性リンパ腫などでも脾腫がみられます。血液疾患で脾腫がみられるのは、異常に増加した血球を処理したり、寿命が短くなり代謝速度がはやくなった血球を迅速に処理するうちに脾臓機能が亢進するためと考えられています。

 肝疾患でも脾腫がみられます。肝硬変が進行すると、肝臓よりも脾臓の方が大きくなることもあるくらいです。肝臓には、門脈という独特の脈管システムが存在します。門脈というのは、胃、小腸、大腸などの消化管から吸収した血液を一つに集め、直接肝臓に流入している血管のことです。肝臓は、門脈血の栄養豊富な材料をもとに、生体に必要なタンパク質、脂肪、糖、ビタミンなどの代謝(合成、分解、異化)を一手に引き受けているのです。脾臓を通過した血液も一度門脈に合流し、肝臓を経由してから全身の循環系に流れていきます。肝硬変になると、消化管から流入する大量の門脈血液を処理することができなくなります。そこで門脈圧の上昇が起こり、脾臓からの血液の処理もできません。このように門脈血液のうっ滞がおこると脾腫が生じるとされています。また肝臓で処理できないタンパクや抗原を脾臓で多く処理するためにさらに脾機能の亢進もおこり、脾腫が進行してくるとされています。

 そのほか、先天的な代謝異常で、脾臓に不要になった代謝産物が蓄積する疾患でも脾腫がおこります。

 このように、脾腫を確認したら、なにか重要な全身疾患があるのではないかと考えるヒントが提供されたことになります。そういう観点から、脾臓の大きさを打診で調べたり、超音波で測定したりしているのです。

 山岡名誉教授がおられた時代は、ようやく超音波検査が出来るようになった頃です。先生が打診でマークされた脾臓の大きさが本当かどうか、超音波装置を使って調べた先生がおられました。その結果、寸分も違っていなかったことがわかり大変驚いたそうです。今の医学は、こういう地道な努力をされた先生たちの基礎の上に成り立っていることを忘れてはいけないと思います。



コラムのTOPに戻る


クリニック紹介ドクター紹介肝機能の異常を指摘された時健康診断のお知らせ
予防接種電子カルテ用語の解説コラムアクセス俳句会

Copyright (c)2005-2006 NAKAMURA NAIKA CLINIC All Right Reserved.