福岡市中央区舞鶴の一般内科、肝臓・消化器の専門クリニック

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コラム
コラム(GOTとGPT検査の意味)
 肝機能検査には多くのものが知られています。最近では職場健診や人間ドックを受ける機会が増えたことによって、アルブミン、GOT 、GPT 、γ GTP 、総コレステロール、ビリルビン、コリンエステラーゼなど肝機能に関連ある血液検査を実際に受けた方も多いと思います。それぞれに肝機能検査としての異なった意味があるので、各検査を組み合わせて総合的に肝機能が判断されています。そのなかで一般によく知られている検査としてGOTとGPTがあります。最近ではアメリカ流にそれぞれAST、ALT という呼び方が一般的になりつつありますが、ここでは以前の呼び方である GOT 、GPT と書くことにします。今回はこの検査の意味について改めて考えてみようと思います。

 GOT 、GPT はアミノ酸のアミノ基をαケト酸に転移する役割の酵素で、トランスアミナーゼとも呼ばれています。生体内で非常に重要な役割を果たしているのですが、臨床検査ではその生体内での役割は問われておらず、血液中でその酵素活性がどのくらい高いかを問題にしています。この酵素は、臓器がなんらかの原因で傷害されると、破壊された細胞内から血液中に漏れ出すために、血液中での酵素活性が高くなります。採血で血清中のこの酵素活性を測定することにより、臓器の障害の程度を推定しているのです。

 GOT 、GPT はともに肝臓の細胞だけに存在するのではなく、多かれ少なかれあらゆる細胞に存在しています。GOT が比較的多く存在しているのが、肝臓(肝細胞)、心臓(心筋細胞)、骨格筋などです。GPT もこれらの細胞に存在しているのですが、肝臓により多く存在しているので、GOT と比較して肝臓の臓器特異性に優れているとされています。GOT 、GPT は肝機能検査の代表選手のような存在ですが、狭心症や心筋梗塞などの心疾患、多発性筋炎など骨格筋の障害でも増加することを念頭においておかなければいけません。

 さて本題である、肝機能検査としての GOT 、GPT の意味について述べます。この検査は昭和37,8年頃に米国で臨床検査としての意義が認められ、日本でも昭和40年頃には血液検査項目として普及していきました。全国の医療機関で肝機能検査としてのGOT 、GPT が測定されるようになってから、医療現場で大きく変わった点があります。それは(1)慢性肝炎という病気の存在が広く知られるようになり、疾患概念として認知されるようになった、(2)慢性肝炎の経過をみるうえで GOT 、GPT は重要な検査項目(マーカー)となった、(3)臨床症状のない疾患(慢性肝炎)が医療機関で治療対象とされるようになった、ということです。

 GOT 、GPT が臨床検査として普及するまでは、慢性肝炎という病気の存在は、一部の学者や専門家を除いてほとんど知られていなかったし、重要視されていなかったと思います。この疾患は今でこそ日本人の国民病としてよく知られている普通の病気ですが、GOT 、GPT が日常の血液検査として普及するまでは、この疾患を簡単に診断する方法がなかったのです。ほとんどの病気は自覚症状と理学所見と呼ばれる診察である程度診断がつけられます。たとえば、高熱で、咳や痰がみられ、聴診で呼吸音の異常がみられれば、容易に肺炎と診断されます。自覚症状や診察所見が揃っていれば、診断にはなんの支障もありません。しかし慢性肝炎はこれができないのです。なぜなら慢性肝炎とは、自覚症状がなく診察(他覚所見)でも異常がないのが慢性肝炎だからです。自他覚症状があれば慢性肝炎ではないと私は考えています。それでは何をもって慢性肝炎診断のてがかりとするかということですが、一言でいうならGOT、GPT が上昇しているかどうかだと思います。もちろんGOT、GPTの増加していない慢性肝炎も例外的にありますが、GOT 、GPTの増加からこの疾患の疑いをもつのが一般的です。

 GOT、GPTが臨床検査として導入されるまでは、肝臓病はどのように診断されていたのでしょうか。病気の兆候として重要視されるものに黄疸がありあます。肝臓の専門医でなくても、医者ならみな黄疸を肝臓の異常として認識することができます。黄疸をみた場合は、さらに詳しい検査をするようにと指示されることでしょう。約 3000 年くらい前、学問として医学が確立され、職業としての医者が登場したとき、黄疸は肝臓の病気の一兆候としてすでに衆知の事実でした。肝臓病といえば黄疸の有無で判断されていたといっても過言ではありません。しかし黄疸が出現した肝臓病はすでに重症のことが多く、また急激に出現してくることも多いため、長期間にわたり肝臓病の経過をみていく検査としては適切とはいえません。GOT、GPT以前の検査としては、黄疸の測定値であるビリルビン値と、膠質反応といわれる TTT、ZTTなどがありました。ビリルビンは肝硬変の重症度の指標とはなりえても慢性肝炎の指標とはなりえません。なぜなら黄疸が出現したら慢性肝炎ではないからです。TTT、ZTTなどの膠質反応は、血液中のβグロブリンやγグロブリンなどの血漿タンパク量を反映しているので短期間に変化するものではありません。これらは慢性肝炎の診断には何の役にも立ちませんでした。

 GOT、GPTという検査が臨床検査として導入されてから、肝臓病の考え方が一変しました。黄疸のない肝臓病、浮腫や腹水などの臨床症状のない肝臓病の存在が受け入れられるようになりました。肝臓の一部を採取(生検)して、病理学的に診断されていた慢性肝炎が、簡単な血液検査でもある程度わかるようになったからです。もちろん脂肪肝やアルコール性肝障害、薬剤性肝障害でもGOT、GPTは上昇するので確定診断にはなりませんが、診断のスタートにはなります。また慢性肝炎の経過をみていくうえにその増減は病気の軽快や悪化の指標と考えられ、患者さんはその値に一喜一憂することになりました。GOT、GPTは肝臓病の患者さんに現在も大きな影響を与え続けていると言えるでしょう。

 日本以外の国々、特に中国、東南アジアではいまだに慢性肝炎は治療対象になっていないようです。治療の対象になるのは、黄疸、腹水、浮腫など肝硬変特有の臨床症状が出現してからのようです。中国では人口の数%が肝炎ウイルスキャリアーという統計もあります。そうなると何千万人もの治療をおこなわなければならないために、高額な医療費をどうするかという問題がでてきます。東南アジアでも同様で、一部の人を除いて慢性肝炎は治療対象となっていないようです。

 よくよく考えてみれば慢性肝炎は不思議な病気です。自覚症状も臨床所見もなく、血液検査で異常を指摘されるだけの疾患です。以前は、慢性肝炎というのはただ経過をみていくだけの疾患でした。治療のために積極的になにかをするということはありませんでした。しかし放置しておくと、 10 〜 20 年後には肝硬変、肝細胞癌に移行していく疾患なので、なんとかそれを食い止めようと多くの人が治療法を研究してきました。 10 数年前に開発、導入されたインターフェロン療法によって、ウイルスを駆除して C 型慢性肝炎の治癒が期待できる疾患になりました。GOT、GPTの高い C 型慢性肝炎の患者さんに、インターフェロンを使うことにより、みるみる肝機能が改善していき、1ヶ月もたたずに正常化してしまったという経験を何度もしています。また B 型慢性肝炎もラミブジンという内服薬の開発によって、血液中のウイルス濃度を低下させ、肝機能を改善させることができるようになりました。抗ウイルス剤によって慢性肝炎が治癒するということは、一昔前までは考えられなかったすばらしいことです。これを客観的に評価ができるのは、やはりGOT、GPTという検査項目の存在が大きいと思います。もちろんウイルスの検査や肝生検などの検査も重要なことはいうまでもありませんが、価格が高価であったり、観血的検査(生検針で肝臓の一部を採る検査)であったりするため、頻回に実施できるものではありません。このように GOT、GPTは、肝臓病の考え方を一変させたということ、経過や治療効果をみていくうえで鋭敏なパラメーターであるなど、現在でも特筆される臨床検査だと思います。



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