福岡市中央区舞鶴の一般内科、肝臓・消化器の専門クリニック

〒810-0073 福岡市中央区舞鶴3丁目2-1-2F Tel.092-751-2345
肝臓・消化器専門のクリニック紹介
肝臓・消化器専門医 中村東樹
肝機能の異常を指摘された時
各種健康診断、肝炎ウイルス検査実施
a型肝炎、b型肝炎、インフルエンザ、ワクチン接種
当院は電子カルテを導入し、検査結果をグラフ化
肝臓や消化器に関する専門用語の解説
肝炎など肝臓・消化器に関するコラム
地下鉄赤坂駅より徒歩3分
肝臓・消化器専門 なかむら内科クリニック
HOMEコラム > B型慢性肝炎の治療
コラム(三国志魏志倭人伝とC型肝炎ウイルス)

今回はB型慢性肝炎の治療ということに焦点を絞って私なりの考え方を述べてみたいと思います。B型慢性肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)キャリアーの人に発症します。HBVキャリアーは、出世時に母親からの直接的な感染(垂直感染)によるものか、3歳頃までの免疫機構の未熟な時期に周囲の人からの感染(水平感染)によって成立します。ウイルスのタイプや個人の免疫力の違いによっては、成人になってからでも、「初感染」→「急性肝炎」→慢性化→「キャリアー」 というパターンの存在も確認されています。
私のクリニックには、20〜60才代まで各年代のB型慢性肝炎の患者さんが通院されています。この疾患で苦しんでいる患者さんは現在もたくさんおられます。一番よいのはウイルスの増殖を抑えてしまうことですが、なかなかうまくいかないこともあります。病状や年令によって治療法が異なってきます。この病気をよく知って、根気よく治療を続けていただきたいものです。

1) 初感染(キャリアー成立時期)から、肝機能が正常な無症候性キャリアーの状態が長く続く。ある時期を境に突然肝機能が悪化する「急性増悪」という病態がみられる。時期的には10代後半から20代にかけてみられる。
2) この急性増悪が起こった後、「急性肝炎」のような経過をたどって、臨床的には治癒してしまう方が多数おられる。この方たちは、ウイルス検査での陽性が続くが、AST,ALTなどの肝機能はずっと正常なままで経過することが多い。いわゆる無症候性キャリアーの状態となる。
3) しかし一部の人では完全に正常化せず、以後AST,ALTの増減を繰り返して「慢性肝炎」となる。B型肝炎で治療の対象となるのは、この慢性化した患者さんである。
4) またなかには急性増悪が起こった後に、急性肝炎ではなく、「劇症肝炎」という致命的な激しい経過をたどることもあり、このときは専門病院での早急な肝臓移植も治療の大きな選択肢となってくる。
5) B型慢性肝炎は、経過中に突然肝機能が正常化したり、逆に肝不全に進行したりと多彩な病態を示すことが知られている。経過観察をしっかりとおこない、あらゆる事態に対応できるようにすることが医師も患者も大切である。
6) このようなB型慢性肝炎の病態を予測するうえで、ウイルス量を示す“HBV-DNA”の測定が役立つことが多い。肝機能の悪化に先立ってHBV−DNAが増加してくるし、逆に改善するときにも肝機能の改善に先立って減少してくる。


1) 機能が正常な「HBV無症候性キャリアー」に対して治療はおこなわない。経過観察を定期的におこなう。これは急性増悪と肝細胞癌発症に対処するためである。できたら半年に1回肝機能検査(AST,ALT)と腹部超音波検査をしていただきたい。
2) 治療の目標は肝機能の正常化である。HBウイルスを体内から完全に消失させる治療法は、現在のところ存在しない。したがって、ALTの基準値である 30 IU/L 以下となるようにするのが目標となる。
3) 慢性肝炎の経過中、ALTが400 IU/L以上、総ビリルビンが2.5 mg/dl以上、プロトロンビン時間が50%以下、その他高熱、意識障害、腎機能障害などがみられた場合は入院治療が必要となる。まず入院による安静が重要である。入院後は専門医に治療を委ねていただきたい。
4) ALTが200〜400 IU/Lのときも入院治療が勧められる。どうしても入院できないときは、外来通院で点滴もしくは静脈注射を毎日おこなう。強力ネオミノファーゲンCを60〜100ml投与する。ALTが80 IU/L以下となることを目標とする。この場合は、毎週肝機能検査を実施して経過をみていく必要がある。しかし治療にもかかわらず経過中に悪化して(3)のような状態になったら直ちに入院していただく。
5) ALTが80〜200 IU/L のときは、外来通院で週3回程度強力ネオミノファーゲンC 40〜100mlを静注する。2週に1回は肝機能検査をおこなって経過をみる必要がある。
6) ALTが30〜80 IU/L のときは、月1回の外来通院をしていただく。1〜2ヶ月ごとに肝機能を調べていただく。内服薬だけで経過をみていただいてもよいが、週2〜3回程度強力ネオミノファーゲンC 20〜60mlを静注してもよい。

上記の強力ネオミノファーゲンCの点滴静注による治療は、ウイルスに対する直接的な治療ではないので、全く効果がみられない患者さんもおられる。しかし抗ウイルス薬以外で肝機能を改善させる治療法としては、強力ミノファーゲンCの投与が唯一のものと考えられる。内服薬では、ウルソデオキシコール酸(商品名 ウルソ)に効果があるとされているが、急性増悪のときには歯がたたない。上記の(6)の状態となれば、ウルソ内服で経過をみることが一般的である。なお上記の以上の方法が、副作用や経済的負担の面から最も穏健な治療である。
この治療法で、肝機能が完全に正常化する患者さんもおられるし、できたらそうなっていただきたいものである。正常化後には、しばらくは月1回肝機能検査をおこなって経過をみていく必要がある。


どうしても以上の保存的な治療で効果がみられずに、肝機能障害が進行していくときは、抗ウイルス剤の使用も検討せざるをえなくなる。HBウイルスの定量値、HBe抗原、HBe抗体などのウイルスマーカーや肝機能障害で重要視される総ビリルビンの上昇、アルブミンの低下、プロトロンビン時間の延長、血小板数の減少などを参考にしながら治療していく。

1) インターフェロン(IFN)
IFN投与中は、ある程度ウイルスの増殖が抑えられるが、白血球および血小板数の減少、脱毛、倦怠感、精神症状など強い副作用があり、長期の使用が困難である。また高価な薬剤であり経済的負担も大きく、使用をやめるとまた悪化してくることなど問題点が多い。B型肝炎ウイルスは、分類上DNAウイルスで、RNAウイルスであるC型肝炎ウイルスよりもインターフェロンのウイルスに対する効果が弱いと考えられている。したがってインターフェロンは、急性期の一時期を除いて、B型肝炎に対して使用されることが少なくなっている。
2) ラミブジン(商品名:ゼフィックス)
この薬剤はエイズ治療薬として開発されたが、B型肝炎ウイルスに効果があることがあきらかになり、5年前からB型慢性肝炎の治療薬として使用されている。1日1回1カプセルの内服を開始してから、先に述べたHBV-DNAがみるみる減少していき、それに伴って肝機能のAST、ALTも低下していく。インターフェロンと異なり、薬剤内服に伴う副作用はほとんどない。良い事ずくめのようだが、内服を止めると減少していたウイルスがすぐにもとに戻ってしまうという欠点がある。また長期間服用していると、この薬剤に耐性をもつ変異ウイルスが出現してくる。この現象をHBウイルスのブレイクスルーというが、服用開始後3,4年もするとほぼ100%に変異ウイルスが増加して、肝機能も悪化してくる。再び肝機能が悪化するかどうかは、HBV-DNAを測定していけば予測することが出来る。肝機能の悪化に先立って増加してくるからである。したがって、肝機能が正常化した後も、定期的な検査による経過観察が必須である。
3) アデフォビル(商品名:ヘプセラ
この薬はB型肝炎ウイルスが、ラミブジンに耐性になってブレイクスルーをきたし、再び肝機能障害がみられるようになった場合に使用される。この薬剤に対する耐性ウイルスの出現例は、現在のところ非常に少ないとされている。しかし今後5年、10年と経過した場合はどうなるかということに関しては、何とも言えないのが実情である。私の経験した患者さんは、ラミブジンの耐性ウイルスが出現後、劇症肝炎となり生命も危険な状態となったが、このアデフォビルを使用することによって救命することができた。治療後2年以上経過したが、現在のところ肝機能は正常なまま推移している。


どの時点で、ラミブジンのような抗ウイルス剤を使用するかという点に関しては難しい問題がある。この薬は一生飲み続けなければならない可能性もあるため、その開始時期は慎重に検討する必要がある。
10数年前、私の患者さんで、40代の働き盛りの男性が、B型慢性肝炎から急性肝不全へと進行して死亡されたケースを経験したことがある。当時はまだラミブジンは発売されていなかったが、もし使用することができていれば確実に救命できたのにと今でも悔やまれる。

ただ最近の傾向として、B型慢性肝炎に対し、1年程度肝機能異常が続いただけで、すぐにラミブジンの投与を開始してしまうケースが多いように感じられる。医者も患者も早く治したいという気持ちが強いためにそうなるのであろう。しかし投与時期に関してはまだコンセンサスが出来ていないのが実情である。私は最後の奥の手としてこの薬を使用すべきと考えている。
躊躇せずに開始すべきなのは、肝不全、劇症肝炎への進展が危惧されるケースである。また慢性肝炎から肝硬変へと進行した後も、炎症が続いている場合は、これ以上の肝細胞の破壊を食い止める目的で使用すべきであろう。
ALTが100〜200IU/Lと高値のまま、長期間にわたり異常が続く場合も使用が検討される。長期間の肝障害は、肝硬変へと進行する可能性が強くなるからである。この場合はその他の指標であるアルブミン、プロトロンビン時間、血小板数などの推移をみながら検討すべきであろう。

以上B型肝炎の治療に関して現在までの知見を述べたが、まだまだ新しい薬剤が出てくると思われる。何か新しい情報・知見があれば、またこの欄で取り上げてみたいと思う。




コラムのTOPに戻る


クリニック紹介ドクター紹介肝機能の異常を指摘された時健康診断のお知らせ
予防接種電子カルテ用語の解説コラムアクセス俳句会

Copyright (c)2005-2006 NAKAMURA NAIKA CLINIC All Right Reserved.