福岡市中央区舞鶴の一般内科、肝臓・消化器の専門クリニック

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肝臓・消化器専門医 中村東樹
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コラム
  
 C型慢性肝炎の新しい治療
 

 C型慢性肝炎の治療に関して、2014年は画期的な年であった。
1992年から開始されたC型肝炎の治療は、インターフェロン注射に加えて1もしくは2種類の薬剤を内服することによって行われてきた。2014年9月からは、はじめてインターフェロン注射なしで、内服薬だけの治療が開始されたのである。
 これまでの歴史を振り返ると、1989年にカイロン社がHCV抗体の測定法を開発してから、C型肝炎の診断が可能となりその臨床像が明らかにされたのである。それまで非A非B型肝炎もしくは非B型肝炎と呼ばれていた疾患のほとんどが、HCV抗体測定が保険適応となった日を境にC型肝炎と呼ばれるようになった。
 C型肝炎の確実な診断が可能となってからは、さらにウイルスの血液中の量(HCV-RNA定量)や遺伝型(ジェノタイプ)などの測定が次々と可能になってきた。ウイルスの感染経路や症状、検査データ、経過などが事細かく明らかにされてきた。個人差はあるものの、感染してから急性肝炎を発症し(症状がほとんどないこともある)、慢性肝炎の長い期間を経て徐々に肝臓の線維化や再生結節がみられるようになり、肝硬変へと進行していく。さらに肝細胞癌を発症する頻度が、病期の進行とともに高くなっていくことも明らかにされた。慢性肝炎の治療は、肝臓内での炎症や線維化を抑制することによって肝硬変への進展、肝臓がん発症を予防し、個体の修復力を利用して少しでも正常の肝臓に戻していくことにある。それには肝炎ウイルスを体内から追い出してしまうのがもっとも重要な治療である。
 これまでインターフェロンという注射薬が治療の中心であったことはすでに述べた。初期の治癒率は、治療されたC型慢性肝炎の20%前後という非常に低いものであった。この治療によく反応するのは、ウイルスのジェノタイプが2型であるかHCVウイルス量が非常に少ない患者に限ることが明らかにされたのである。残念ながら日本人にはジェノタイプが1型でかつウイルス量も多いタイプが70〜80%もみられたのである。
 その後治療法もインターフェロン単独から、併用する内服薬の組み合わせによって治癒率も徐々に向上していき、最近のペグインターフェロン、リバビリン、ソブリアード(シメプレビル)3者併用療法では、治癒率85%程度まで成績が向上してきた。効果だけみると以前と比べると非常に満足のいく結果と思える。しかしインターフェロンの副作用が非常に強いために、治療を受けられなかったり、最後まで継続できずに中止してしまうケースが非常に多かったのである。
インターフェロンの副作用は多岐にわたるが、主なものを列挙してみよう。
@ 発熱 (以前は必発であったが、週1回投与のペグタイプに変わってからは少なくなってきた)
A 貧血、白血球減少症、血小板減少症
とくに白血球、血小板の減少はほぼ全例にみられる。
B 併用薬のリバビリンを内服すると貧血がさらにひどくなる。
C 食欲不振、
D うつ病、躁病 (自殺企図のケースもみられる)
E 脱毛
F 網膜症
G 間質性肺炎
H 自己免疫疾患の誘発
I 糖尿病の悪化 
などが主なものとして知られている。
 副作用の話を聞いただけで、絶対にこのような治療はしたくないと治療を受けられなかった方が多数おられた。とくに女性は脱毛に対する不安が強いようである。

 今回C型慢性肝炎の治療薬として内服2剤の6ヶ月間の治療が開始された。この薬は、商品名ダクルインザ(一般名:ダクラタスビル塩酸塩)、スンベプラ(アスナプレビル)である。この治療は、インターフェロンでみられた上記の副作用がほとんどないことが知られている。この治療法によるC型肝炎の治癒率は現在のところ80~90%になるとされている。以前と較べると格段の進歩と言わざるをえない。
 B型およびC型慢性肝炎の治療に関しては、国として経費助成事業がおこなわれている。この薬剤は非常に高額であるので、6か月の治療期間中は国からの医療補助を受けていただくよう案内している。したがって、以下に記載する治療対象者であるかどうかを必ず確認していただきたいのである。
 現在のところ健康保険および国の肝炎助成事業で治療を受けられるのは、次のような方に限られるのである。(薬剤の添付文書の記載より)
以下の診断がなされていること

<A>
(1)ジェノタイプ1型のC型慢性肝炎
(2)ジェノタイプ1型のC型代償性肝硬変

さらに <B> 
(1)インターフェロンを含む治療法に不適格の未治療あるいは不耐容の患者
(2)インターフェロンを含む治療法で無効となった患者

以上を読んだだけでは理解されない方が多いと思われるので、もっとわかりやすく説明すると <A> は、  
@ C型肝炎ウイルスが陽性と診断されていること
A さらにウイルスの型がジェノタイプ1型であること
B 病期が、慢性肝炎か代償性肝硬変であること(肝臓専門医が診断する)、
以上が必要条件になっている。

 ここでウイルス遺伝子のジェノタイプ2型はなぜ治療の対象にならないかという疑問がでてくると思われる。実は臨床治験はおこなわれたのだが、内服治療に対してジェノタイプ2型のC型慢性肝炎はほとんど効果がなかったとのことである。これまでC型慢性肝炎の治療に携わり、インターフェロンがジェノタイプ2型に対して非常に有効な治療法であったことを知っているものとしては、この治療法が1型には効くが2型には効果がないという事実は驚くべきことである。

 次に<B>を説明する。
Bの(2)はわかりやすい。過去にC型肝炎の治療として、インターフェロンを含む治療を受けたが、最終的にウイルスが消失しなかったり、消失しても終了後再び陽性となったため治癒に至らなかった方。このようにインターフェロンを含んだ治療が無効であったと判断された方たちは、無条件で内服治療の対象者になる。
Bの(1)だが、インターフェロンを投与すると多彩な副作用が出現する可能性が強いと説明した。すなわちうつ病、白血球や血小板減少症、貧血、関節リウマチなどの自己免疫疾患、高度の糖尿病、など治療により悪化する可能性のある疾患を有している患者(不適格の患者)が対象になる。
 さらに、過去にインターフェロン治療を受けたが、治療期間中に副作用などで、継続が困難と判断され中止した患者(不耐容の患者)が対象。
以上のように解釈されるようだ。

*経口剤による副作用
 どのような薬剤も当然副作用がある。インターフェロンのような副作用がないと言ってもまったくないわけではないようだ。現在問題になっているようものを列挙してみる。
(1) 肝機能障害
肝臓の治療薬で肝機能障害が起こるというのも変な話だが、薬の代謝が肝臓で行われる以上薬剤性肝障害はおこりうるものである。肝機能が突然悪化する可能性があるために、2週間毎のチェックが必要とされている。現在のところは、内服を中止すると速やかに肝機能は改善するとされている。
(2) 鼻咽頭炎、頭痛。倦怠感など (治療継続に問題となることは少ない)
(3) 耐性ウイルスの増加
 これらの薬剤に対して変異ウイルスが存在して、効果がなくなることが知られている。とくにダクラタスビル(NS5A領域)に対する耐性変異で、Y93Hが知られている。治療前にY93Hが検出された患者は14.0%(30/214例)であった。この治療の治癒効果は、Y93H(+)で43.3%と大きく低下するのに対して、Y93H(−)では91.3%であった。治療により耐性ウイルスが、治療前よりも増加するために将来の治療が無効になるのではないかという心配もされている。耐性ウイルスが存在するかどうか確認できればよいが、現在のところ検査が高価なことや絶対無効であるという確証もないため一般的ではない。ウイルスの変異を有していてこの治療法に無効な症例に対してどのようにするかは、今後の残された課題となっている。

 以上C型肝炎の治療に関して述べてきたが、最終的には、血液中からウイルスが検出されなくなり、肝機能が正常化するのが治療の目的である。まだまだ課題は多いがいまのところその目的に近づきつつあることは間違いないようである。将来C型肝炎の患者がほとんど治癒してしまうのもそう遠い日ではないような気がしている。




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